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12月30日“2017年歴史修正主義事件簿”について
<<本サイトで何度も詳しく伝えているように、
戦中に日本軍が慰安所をつくり、現地の女性を慰安婦にしていたことは、
多くの公文書や証言が残っている歴史的事実だ。>>
こういう書き方には問題があります。
まず第一に、「事実」は、
<<それを証明する「証拠」が本物>>
である必要があります。
しかし記事の執筆者は、「証拠が本物かどうか」を検討しません。
(1)紙質は当時の物か。
筆記具として使ったものは、当時の状況に照らして妥当か。
文字や言葉の使い方は、当時の状況に照らして妥当か。
書風や筆意は、当時の状況と文書の目的に照らして妥当か。
印章は真正のものか。
*比較する物が公文書なら、
既に真正と判明している公文書との、
詳細な比較検討が必要です。
(2)その史料の内容は、他の正しい史料と矛盾しないか。
(3)その史料の形式や内容が、
それに関係することに、発展的に連絡し、その性質に適合し、
蓋然性を持つか。
(4)その史料自体に、作為の痕跡が何もないか。
それを検討する方法として、以下に列挙する。
a) 満足できる説明がないまま遅れて世に出た、というように、
その史料の発見等に、奇妙で不審な点はないか (来歴の検討)
b) その作者が見るはずのない、またはその当時存在しなかった、
他の史料の模倣や利用が証明されるようなことがないか。
c) 古めかしく見せる細工からきた、
その時代の様式に合わない、時代錯誤はないか。
d) その史料そのものの性質や目的にはない種類の、
偽作の動機から来たと見られる傾向はないか。
上記の「証拠が本物かどうか」を検討する方法は、
1935(昭和10)年の今井登志喜『歴史学研究法』
に書いてあったものです。
私は今井著『歴史学研究法』(東大出版)の全文をサイトUPしました。
またその要約は、以下のページにあります。
http://tikyuudaigaku.web.fc2.com/tikyuu.siryouhihann.html
私は、慰安婦問題弁護士・渡辺春己氏と、
慰安婦問題トップ研究者・吉見義明氏が、
対談本の中で、この今井著を取り上げながら、
<「真贋検討法」と「虚偽の例」を「隠蔽」した>
のを見つけました。
*『歴史の事実をどう認定しどう教えるか』 教育資料出版社1997・p190
これはつまり、公文書の「発見者」が渡辺弁護士や吉見義明氏であるならば、
その発見は「どのような経緯によるか」、
それをまず追求しなければならない「不審な行為」と見なされ得る、
ということです。
証言内容もしかり。渡辺弁護士は、元慰安婦のデタラメ発言を、
「錯誤」だけで説明し、「虚偽」をカットします。
しかしそれは、今井著の、
「錯誤」と「虚偽」が続けて出てくる書き方からすると、
非常に不自然で「不審な行為」です。
また、今井著では詳細に順序良く出てくる「真贋検討法」を、
上記対談本の主たる参加者である渡辺氏が、
ほぼ完全に隠蔽したのは確かです。
そしてこの本の他の、南京事件、731部隊等の左派参加者には、
全く伝わっておりません。
そして、「史料は真贋の検討が必要だ」という観念が、
全体として左派には全くなかった、という、
極めて不審な事情が発生しています。
これは、公文書や証言が、事実の証拠としては使えない、
という状況を示しているのです。