北岡伸一先生(2015年3月10日送信)    (20160928UP)

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   【史料の真贋の検討に触れない研究者たち】

突然失礼いたします。首相に侵略したと言わせたい、という会見を見ました。
私の意見をご一読の上、歴史問題のアプローチをお考えいただけないでしょうか。

以下の文章は、建国記念日を意識して、
日本会議、各新聞社、考古学協会等に、すでに送信したものです。

日教組、岩波書店、中西輝政氏、山中恒氏(勁草書房経由)、
歴史学研究会、日本史研究会、史学会などにも送信しました。

日本史の開始や君が代問題に関連します。

また、南京大虐殺・従軍慰安婦問題関係者が、史料の真贋の検討に触れない、ことを、
非常に疑問に思っています。

全く反応がありません。
無視されているというよりは、問題が複雑すぎるのではないかと思っています。
反論があればお願いします。


*****
「歴史の始めから天皇家」というのは本当でしょうか。

「古墳時代と天皇家」の関係は、非常に疑問です。

誰でも知っていますが、古事記・日本書紀は、古墳時代には全く触れません。

350年間ほどの古墳時代。全国に築かれた前方後円墳は、少数の前方後方墳を含めれ
ば、
総数約5200基にもなります。(近藤義郎編『前方後円墳集成・全6巻』山川出版
社)

しかし教育では、この「総数」という観念すら出てきません。
海外にも出したがらない様子。おかしいのではないでしょうか。

前方後円墳5200基という、この世界史的にも珍しい事実を、
「不都合だと認識している人々」がいるような気がします。

記紀が成立した時代には、まだ、全国の交通の要所要所に、
前方後円墳が、巨大な人工構造物として見えていたはずです。

もしそれが緑の小山に変化していたとしても、人工物であることの記憶までは、
消し去ることはできなかったでしょう。
直接・間接に造営工事に関わった人々は、全国民に及ぶのではないでしょうか。

計画し、手配し、測量し、築造や埋納品製造の技術を伝え、人々を動員し、
鉄や木などの材料を加工し、道具や運搬具などの器具を作り、
運搬や動員のための、陸海の交通路を確保し、
作業者たちの衣食住を準備し・・・

全国に巨大なモニュメントが出来て行くのを、知らない人が、どれくらいいたでしょう
か。

天皇家が古墳時代の運営に関わっていたのなら、この「全国の活動」について、
一言たりとも言及しない、というのは、おかしいのではないでしょうか。

少なくとも、「この時代に天皇家が関わった、という証拠は、今なお提出されていない
」、
ということは、言えるのではないでしょうか。
これは非常に変です。

***
また私は、南京大虐殺・従軍慰安婦問題では、
日本人研究者たちによる「偽作史料の流布」を指摘しています。

「研究者たちがスパイでは」
http://1st.geocities.jp/rekisironnsyuu/kennkyuusyatatigasupaideha.html

これに関しては、「国益の毀損」という方向から心配しています。
   昭和10年刊本からの日本人手書き手紙の影印174点をリンクさせた、
   私の論文・約26枚にもリンクしています。

上記いずれも、「史料批判」という、戦前の東大西洋史・今井登志喜の著作による、
歴史認識の基礎からの問題提起です。

「歴史と証明」という語で、私の概要説明ページが検索できます。
http://1st.geocities.jp/rekisironnsyuu/rekisitosyoumei.rironnhenn.html

「物証」に関する説明は私のオリジナルです。他では読めません。
しかし現代人は、普通はこのように考えていると思います。
是非、目を通していただきたいと思います。

古墳時代と天皇家の部分で使った「沈黙の証拠」に関する考察は、
方法論としては今井登志喜『歴史学研究法』「総合」の項に出てきます。
http://1st.geocities.jp/rekisironnsyuu/genndaibunn.imai.5.html


私、東大出版の許可を得て、確か2009年末から、
今井著『歴史学研究法』全文をネット掲載しているのですが、
これを東大が絶版にしているのは、おかしいのではないでしょうか。

*****(以下は朝日新聞「声」欄に投稿したものです。)*****

歴史認識問題の、議論の再検討を強く訴える。

南京大虐殺問題も従軍慰安婦問題も、
その証拠について、
どのように真贋の検討がされたか、については、全く明らかにされない。

真贋の判定は、歴史学では基本的な作業である。
しかしこの方法が、一般人には周知されていない。

そのために、専門家が本物だと断言すれば、人は、
理解も納得もないままに、鵜呑みにするしかなかった。

この民主主義社会を標榜する現代日本では、
このような基本事項の専門家の占有は、許されるべきではない。

医療でさえ、医師の独断専横は許されず、
患者への情報伝達、理解の徹底が求められる。

それなのに、
史実確認の基本的な作業方法は、一般に知らされない、
真贋の判定の過程が知らされない、というのは、
重大かつ危険な片手落ちである。

歴史認識問題を取り上げる際には、政府には是非、
「当時の確実に正しい現物史料」と、「証拠とされた当該現物文書」が、
誰にでも、比較検討できるように、その公表をしていただきたい。

そしてそれについて、どこをどう比べて確認するか、
誰にでもわかるように、専門家が解説を加えるべきなのだ。

それが、公正を重んじる民主主義国家のやり方というものである。

多数の納得の得られないまま、理屈だけひねって、これが歴史認識だ、
と言明するようなことは、あってはならない。******

久武喜久代  59歳  suisyou2006@nifty.com

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